調剤薬局向けテレアポで事業承継の話を切り出すコツと受付突破トーク

薬局M&A市場が拡大する中、テレアポの難易度も上がっている

調剤薬局の事業承継・M&Aは、ここ数年で急拡大している分野だ。薬価改定のたびに利益率が圧迫され、後継者問題を抱える薬局オーナーも多い。実際、全国の調剤薬局約6万店のうち、個人経営や小規模チェーンの割合は依然として高く、「いつかは考えないと」と思っているオーナーは少なくない。

ただし、テレアポでいきなり「事業承継」や「M&A」と言えば、当然ながら警戒される。「うちは売る気ないよ」と即断されるパターンが大半だ。

今回は、調剤薬局向けに事業承継の提案をテレアポで行う際の、受付突破から社長との会話、断り文句への切り返しまでを具体的に見ていこう。

受付突破は「事業価値算定」をフックにする

調剤薬局の受付は薬剤師やスタッフが兼務していることが多い。営業電話だと判断されれば、社長に取り次いでもらえない。

ポイントは、「事業承継をしましょう」という話ではなく、「事業価値算定のご連絡」という情報提供の形で入ることだ。

具体的にはこんなトークになる。

「〇〇薬局様の事業価値算定の件でご連絡しました。経営に関するお話ですので、社長にお取り次ぎいただけますでしょうか」

「事業価値算定」という言葉は、受付スタッフにとって聞き慣れないワードだ。よく分からないから判断できない → とりあえず社長に回す、という流れが生まれやすい。「経営の件」と付け加えることで、受付が独断で断りにくい空気を作るのもテクニックだ。

社長への第一声で「売りませんか」は絶対にNG

社長に繋がったら、最初の30秒が勝負になる。ここで「M&A」「売却」というワードを出すと、ほぼ確実に壁ができる。

効果的なのは、業界動向を入り口にするアプローチだ。

「最近、御社の地域で調剤薬局の統合・再編が水面下で進みつつありまして、弊社のお取引先の中に御社に興味を持たれている企業様がいらっしゃるんですね」

これは「売ってください」ではなく「あなたの会社に興味を持っている人がいますよ」という情報提供の形だ。人は自分の会社に対する評価を知りたいもの。この切り口なら、少なくとも話を聞く姿勢にはなってもらいやすい。

さらに、すぐにフォローを入れる。

「ただ誤解しないでいただきたいのですが、今すぐ事業承継をしましょうという話では全くなくて、こういった話は非常にセンシティブですので、まずは御社の地域の統合・再編の状況や、御社の企業価値などの情報提供として30分お時間をいただきたいんですね」

**「今すぐの話ではない」「情報提供だけ」**というガードを入れることで、心理的ハードルを下げる。テレアポ全般に言えることだが、「売り込み」ではなく「情報提供」のポジションを取ることが受け入れてもらう第一歩だ。

「売る気はない」と言われたときの切り返し2パターン

薬局オーナーから「売る気はない」と言われることは、この業界のテレアポでは日常茶飯事だ。ここで引いてしまうと何も始まらない。効果的な切り返しを2つ紹介する。

パターン1: 退職金の観点から切り返す

「会社を手放すという話ではなくて、社長にはそのまま代表でいていただくケースが多いんです。先に退職金を確保して、引退まで現役で続けていただくという形ですね」

M&A=会社を取られる、というイメージを持つオーナーは多い。実際には代表続投のスキームもあることを伝えると、「そういう形もあるのか」と興味を示す人が一定数いる。

パターン2: 企業価値を知ること自体のメリットを訴求する

「売るかどうかの前に、社長が何年もかけて築いてきたお仕事の客観的な価値を知っておいて損はないと思うんですよ。退職金としてどのくらいになるのかという観点でも、一度聞いていただきたいんです」

「価値を知る」こと自体にはリスクがない。この論点に持っていくことで、「話だけなら聞いてみるか」という着地点を作りやすい。

薬価改定・業界再編をフックにする

テレアポのタイミングとして強力なのは、薬価改定の直後だ。改定のたびに薬局の利益率は圧迫される。「今年の薬価改定で、御社の地域でも統合の動きが出てきていまして」というフレーズは、オーナーの肌感覚に合致しやすい。

実際、大手チェーンによる中小薬局の買収は年々増えている。オーナー自身も周囲の変化を感じているからこそ、「うちの地域でもそういう話があるのか」と関心を持ってくれる。

数字で言えば、調剤報酬改定は2年に1度のペースで行われ、改定のたびに基本料の要件が厳格化されている。「門前薬局」の形態だけでは生き残りが難しくなっている現実を共有することで、情報提供の必然性が増す。

アポ取得後のヒアリングで押さえるべき3点

アポが取れたら、面談では以下の3点をヒアリングしておくと、その後の提案がスムーズになる。

  1. 店舗数と立地: 門前薬局か面対応薬局か、複数店舗か単店か
  2. 後継者の有無: 息子・娘が薬剤師かどうか、継ぐ意志があるか
  3. 直近の業績トレンド: 処方箋枚数の増減、在宅対応の有無

特に後継者問題は核心だ。「いずれは」と思っているオーナーほど、具体的なタイムラインを持っていない。面談で選択肢を提示することで、初めて検討のテーブルに乗る。

まとめ

調剤薬局向けの事業承継テレアポは、「売りませんか」ではなく「あなたの会社の価値をお伝えしたい」というポジションが鍵だ。受付には「事業価値算定」で突破し、社長には業界動向と情報提供をフックに30分の時間をもらう。断られても、「企業価値を知ること自体に損はない」という論点で粘る。

テレアポで最も難しいのは、相手が必要性を自覚していないテーマを切り出すことだ。だからこそ、「売り込み」ではなく「知っておいて損はない情報」のスタンスを徹底することが、この業界で結果を出すための基本になる。

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